
九州のほぼ中央「臍」に位置する宮崎県東臼杵郡椎葉村
村の中心地かさらに車で1時間あまり
標高900Mの秘境へ
2025年8月1日 快晴
数日間に渡る天気で地面まで乾燥した焼畑日和
『民宿焼畑』
椎葉勝さん一家が代々護り繋げてきた「焼畑」を体感することが叶いました
【椎葉勝さんに「おう、やっと(焼畑本番に)来たな」と仰って頂き感無量】
2023年の夏に初めて「民宿焼畑」を訪れた時
焼畑後8日目の傾斜地に蕎麦の芽が健気にでも逞しく芽吹いていました
その秋に再訪した際は焼畑2年目の畑に雑穀がたわわに実っている姿をみて感激
そして2024年真冬(2月)に脱穀と精製過程である“稗つき”を体験
これまでの椎葉村への旅について詳しくはコチラから
((レポート:宮崎椎葉村・民宿焼畑体感旅~夏の焼畑・秋の実り・真冬の稗つき~))
「えつこさんの台所」では“雑穀”を「叡智が眠るたぐいまれなひとつぶ」として
生まれや育ちからあらわれる特性と台所でもっともっと美味しくする方法をお伝えしています
((これまでの雑穀の会の様子と雑穀の産地徳島への旅のレポートはコチラから))
【企画・制作 椎葉村役場農林振興課】
椎葉村が配布している絵本
『りんたろうといのちの種』
りんたろうのじいちゃんの印象的な唱え言葉が綴られています
「このヤボに火を入れ申す
ヘビ、ワクドウ、虫けらども、早々に立ち退きたまえ
山の神様、火の神様、どうぞ火の余らぬよう
また、焼け残りのないよう、おん守りやってたもりもうせ」
ソバの種をまきはじめる時の唱え言葉は
「これより空き方に向かってまく種は、
根太く、葉太く、虫けらも食わんよう、
一粒万倍、千俵万俵、おおせつけやってたもりもうせ」
この唱え言葉をその日その場で聴きたい、とずっと願ってきました
※ヤボ=焼畑
※ワクドウ=蛙
※日が余る=火事のこと
※空き方(あきほう)=障りのない方向
まずは火熾しから
儀式だけれど大勢ですると祭り!大騒ぎ
熾した火を今年火入れする場に運びます

火を眺めているのは勝さんのお孫ちゃん
ここまでお父さんと火を運んできました
火入れをする傾斜地の上方にしつらえた山の神様への祀り場
「山の神様は緑が好きで、火の神様は赤が好き」緑と赤の御幣をさして祈りを捧げる
山の神様と火の神様へのお願いごとと
山の生き物へ焼畑が始まることを伝える唱え事をここで
「このヤボに火を入れ申す
ヘビ、ワクドウ、虫けらども、早々に立ち退きたまえ
山の神様、火の神様、どうぞ火の余らぬよう
また、焼け残りのないよう、おん守りやってたもりもうせ」
火が入った
瞬く間に広がってゆく
40年近くもの間森だった土地が
美しく綺麗に焼けていく
火の入れ方はもちろん
前年の秋に木と草を伐採する、前日までに防火帯をつくる準備にも
自然の秩序に習った手順が生きていることを
山の神様と火の神様がみていらっしゃる
山の生きものたちも
この日「一線を退く」と代替わりを宣言した
椎葉勝さんの姿にばかり目がいってしまう
「炎は800度にもなる」「体感温度は50度以上」
その炎のなかを平然と進み焼き進めるお姿に
体感温度50度以上
焼けゆく傾斜を背にして
向いの山々にむかうと
谷から上昇気流が駆け上がってきて
背中側は焼けるように熱いのに
顔には強い涼風があたる
火と風の合流点に立った時の畏怖の感覚は一生忘れないだろう
上昇気流が煙を運び
上からは木々の間を抜けた太陽光が差し込んで
荘厳な景色に
「天孫降臨じゃ」と勝さんは笑った
まだ熱さの残る大地に種まき
「これより空き方に向かってまく種は、
根太く、葉太く、虫けらも食わんよう、
一粒万倍、千俵万俵、おおせつけやってたもりもうせ」
そう高らかに唱え言葉を口にしたのはお孫ちゃんでした
後から聴いたところ、お孫ちゃんは毎晩絵本『りんたろうといのちの種』を読んですっかり諳んじているそう
代々繋がれてきた種も
今日のお孫ちゃんの口上を聴いていただろう
椎葉さん一家が種を蒔いたあと
灰が舞うなか
箒で大地の表面を均しながら傾斜を降りる
最初の年はそば
翌年は稗と粟、三年目は小豆、4年目は大豆
その後はまた森に還っていく
火が地力を高める
灰が再生力となる
人の営みが自然の循環の一部になる
この規模で火を扱うことが出来るのは
先人の教えを守りながら
大自然の聲を聴く事が出来るひとだけだろう
念願の焼畑
折しも世代交代のその年に拝むことが出来ましたことに、心から感謝
焼け地が森へと再生していく時間軸でものごとを計ることが出来ること
大自然への畏敬の中に生きた知恵
大地に根差した技と術
たった一日の出来事の中に何百年もの物語をみるような時間でした
お昼ごはんはお母さんたちが用意してくださった夏野菜たっぷりの素麺!
「食が大事」
勝さんのお話はいつもそこにいきつきます
標高900Mの食の恵みは生命力に溢れていて
山の空気を吸って汗をかいて笑顔で頂きますをすると
街の暮らしで縮んでいた部分がすぐさま元に戻る
何度も通いたくなる
「食」の原点がある
椎葉村
勝さんミチヨさんのお導きのお蔭様で
ようやく伝統の焼畑農法に触れることが出来ました
ありがとうございました

【参考文献】
おばあさんの山里日記 (文 :佐々木章)
椎葉の焼畑の手順書 (発行:椎葉村役場 農林振興課)
りんたろうといのちの種 (企画・制作:椎葉村役場農林振興課)